フリーマーケット
概 要
いつのころからか、日本では「フリーマーケット」なるものが全国的に開かれるようになり、現在ではすっかり定着しています。 これには毎月行なわれるもの、年2〜3回のもの、または他の大きなイベントの中の一プログラムとして行なわれるものなど色々で、その形態も 個人出店、団体出店(バザー)、業者出店などがあります。要するに、フリーマーケットといっても、その雰囲気はそれぞれ異なるので、とにかく 色々なところに足を運ぶことが大切です。
さて、本題の古文書収集について、名のある人物の書簡や掛け軸を求めるのであれば、それなりの目が必要ですし、場合によってはそれなりの 資金も必要です。一方、歴史研究の材料や古文書の読解の教材程度の感覚で集めるのであれば、とにかくまとまったものを格安で求められればいいでしょう。しかし、そんなに簡単なものでもありません。とにかく、こまめに足を運ぶこと。これが良いものに出会えるチャンスに繋がります。
費用のこと、相場のこと、価値観のこと、色々と持論はあるのですが、それも所詮、持論ですので、ともかく、ある年の正月に山口市で開かれた 「フリーマーケット骨董市」に行ったときの報告をして、フリーマーケットでの古文書収集の実態をご紹介したいと思います。
このフリーマーケットは山口県立山口図書館の近くの広場で、毎月第一日曜日の日の出から行なわれています。
この年の一月の第一日曜日は元旦だったため、出店数は少なめでした。また結構寒い日で、出品された商品にうっすらと霜がついている店もありました。
それぞれの店を丹念に見て廻って30分くらいしたところで、大福帳のような冊子がぎっしりつまったダンボールを発見! 店の方に許可をとって(重要!)、ぱらぱらとめくってみたものの、内容の大半は日付と数字。その形式より明治から昭和はじめあたりの物のようですが、年代は書かれていませんでした。 また帳面を使っていた人物の名前は書いてあったものの、住所は分からず、これでは歴史研究の史料として使うのも難しいと判断し、値段も聞かずに店をあとにしました。
「今回も空振りか」とあきらめかけたそのとき、瓦やビン類、古い木製品など、とにかく古いものを売っている店の片隅に積まれた書籍が目に付きました。 立ち止まると店番のおじさんが、この雑誌は何とかいう有名な軍人の裸姿が載っている、と笑いながらその雑誌を見せてくれました。「ああ、おもしろいです ねえ」と愛想笑いをしたところ、その雑誌の下にひもで束ねられた本や古文書、証書などを発見! 「ん、あの証書は地券だ。」とすぐに分かりました。 問題は値段だが。「これは?」との問いに、店主は「ああ、これは色々なところで入手して良く分からん物なんで、1000円。」とのこと。 これは買い! ということで、今回の収穫はこれだけでした。その場で見たかったのですが、帰ってからゆっくり見よう、と寒い中、自転車をとばしました。
帰ってから、さっそく束の中身を見てみました。
● まずは昭和10〜30年の教科書類
結構面白いかも。
漢字とカタカナで書かれた日本の歴史です。
小学校1年生の女児用の図画の教科書です。
男児と女児で図画の内容が異なるとは...
さすが戦前!
● 次に大正から昭和初期の村役場関係の文書
村役場に対する申請や願書、農業委員会の議事録など、町村の歴史研究に役立ちそうな文書です。
● 最後に、地券(改正地券)
土地台帳制度ができる前(明治20年)まで効力のあった証書で、地目、地番、所有者、税金などが書かれています。
以上、3つに分類した文書類はそれぞれ所有者が異なっていましたが、容易に分類できたうえ、全て山口県内のものだったので、
久々にいい収穫といえるものでした。これで1000円は安い!
−−− とはいえ、こんなことはなかなか無いものです。
フリーマーケットでの収集の難しいところは、価値がわかりにくいこと。また、人によって価値の考え方が全く異なることです。例えば、私は買わなかった大福帳のような文書は、飾り(ディスプレー)としてのニーズがあります。このような場合、詳細な年代や書いてある内容なんか問題ではなく、古そうで味があればいいわけです。また、戦前の手紙類が混ざった文書は、手紙の内容に興味を持つ人と切手や消印に興味を持つ人とがいます。
切手なんかはどうでもいいのに、「この切手は珍しいので一万円」なんて言われたら、古文書収集としては諦めるしかありません。
ということで、何かの参考になりましたかどうか分かりませんが、お読みいただきましてありがとうございます。