フリーマーケット
激安編
あるフリーマーケットで小汚い物をあれこれを売っている親父の店を見つけました。しばらく観察していると、とにかく安く売っていて、店は繁盛していました。骨董的な道具が多かったのですが、もしやと思い、
「古文書みたいなものはないですか?」 と聞いたところ、
「ああ、そこに3箱ある」 との返事。恐る恐る、値段を聞くと、
「1箱500円」 との回答。なんと安い! 3箱とも購入しました。
「こんなもんだったら倉庫に100箱くらいあるわ」 と言われ、
「そっ、それで値段は」 というと、やはり1箱500円ということで、
とにかく名刺交換して、「是非、またよろしく!」 とお礼を言ってその場を去りました。
これはすごい人に出会った! と、少々笑みを浮かべながら、次の月のフリーマケットを楽しみにしていました。ところが、次の月も、その次の月も、その親父は現れず、名刺にあった電話番号に電話をすると、留守電。
半年後、風の噂でその親父は 塀の中 にいることが判りました。
その親父の倉庫は家賃滞納で大屋さんが怒り、中の物を全て焼却したとのこと。チィ〜ン。新聞で確認したところ、盗んだ物を売って捕まったのではなかったようで。
- ともかく、(今は亡き)その激安ショップで買った3箱1500円の中身を紹介します。
これが問題の(問題ではないが...)3箱です。
箱には「細工帳」、「萬覚帳」、「取立帳」など、縦長の帳面が20冊くらい入っていました。これを腰にぶら下げて、商売をしていたんでしょう。
講の議案や決算書など 雛形や手本類
- 商売人のようだが、何者だろう。
箱の中の文書をあれこれ見ているうちに、山口県内のある町で醤油製造業を営んでいる家の文書であることが判ってきました。 右の写真は「醤油製造簿」です。この他、醤油製造の組合関係の明治〜昭和初期の文書がかなり含まれていました。これは歴史資料としては、 結構貴重と言えるのではないか! と満足。
筆と硯(すずり)も入っていました。
この筆であれこれ書いていたんだ....
ふーん、という感じ。硯は木でできていました。
- 江戸時代の文書もいくつかありました。土地の売買に関する契約書ですが、これについて興味深いことがありました。
まずは安政2年(1855)に交わされた、畑1反の売買に関するものです。
売り手と買い手には苗字がなく、屋号の「○○屋」が付いています。そして、畔頭(くろがしら)と
庄屋の名前が書かれています。百姓が五人組を形成し、その五人組を束ねるのが畔頭で、その上位に
庄屋がいました。
明治6年に交わされた山林の売買に関するものです。そろそろ戸籍ができて、全ての人に苗字が
あるはずですが、売り主は「清七」、証人は「福松」と苗字が書かれていません。庄屋のところには「副戸長」の
記載がありますが、畔頭は依然いたようです。まだ、藩政時代の制度を引きずっているような契約書です。
明治10年の契約書です。
最後に副戸長と戸長の印があります。
印紙が貼られています。
明治10年の中頃になると契約書は罫紙が使われ、苗字もあり、戸長の名前が書かれています。
しかし、罫紙って、なんだか趣(おもむき)がないですね。
地券が出てきました。壬申地券が2枚と改正地券が10枚弱。
壬申地券はオークションでは1枚3000円くらいで出ていたりしますが....。
まあ、私は売るのが目的ではないですが。
「学制頒布(はんぷ)五十年記念」という小冊子が出てきました。尋常高等小学校で記念式典が行われたようで、その時のものです。
「毒瓦斯(ガス)防御ニ関すスル心得」という印刷物がありました。将来の戦争に備えて、毒ガスが投下された場合の対策が書かれています。
海軍燃料省による発行です。
- 最後に、意味の判らんものを1つ。紙でできた袋なんですが....。
大日本国防婦人会が作成した「抜毛入袋」。抜毛(ぬけげ)をこれに入れたんでしょうが、その後どうしたんでしょうかねぇ。
なんと 「抜毛をためて兵器を献納しませう」 と書いてある。
・抜毛が兵器になるのか? 「この抜毛をくらえ〜」とか、...まさか。
・抜け毛を資金にして、兵器を買う? 金になるのか?
・爆弾に抜け毛を搭載し、女性も参戦? 「抜毛」って髪の毛、それとも....? 全く判らん。
その他にも色々怪しい物がありました。
今は、公的機関に寄贈し、閲覧が 可能なので、ご興味のある方は是非どうぞ。