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ふすまはがし

目 次

ふすまをゲット

山口県外に在住のある方から、「私のホームページを見た」ということで、その方のご先祖に関する調査依頼のメールが来ました。 その後、除籍謄本なども郵送されてきて、その方のご先祖が山口県内のある村(A村とします)に関係した名家であることが何となく判ってきました。 「現地に行ってその家の痕跡を探そう!」と、レベル:Dの調査を開始しました。

 藩政時代、A村は萩藩の直轄地(蔵入地)ではなく、藩士の給領地であったことも判り、その藩士の家来(陪臣)が村内にかなり住んでいました。 私のデータベースで家来の名前をリストアップし、これをプリントしたものだけを手持ち資料に、現地に向かいました。山口市から1時間程度で現地に到着。 まずは、神社に直行。その村で暮らしていた痕跡は、神社に寄進された灯籠や石鳥居などに刻まれていることが多いからです。私は「神社は村のコミュニ ティーセンターといえる場所」と考えています。「せっかく来たのだから、神社内のすべての石造物に刻まれた文字を記録しよう!」ということで、 3時間かけて調査。石造物はほとんどが明治以後に据えられたものでしたが、プリントアウトした家来と同じ苗字が結構見つかり、陪臣が村にとけ込んでいた 状況がうかがい知れました。

 時計を見ると、もうお昼を過ぎていましたが、コンビニすらない村だったし、時間も貴重ということで、昼食抜きで聞き込み調査を開始。 ところが....、人に出会わない、誰も歩いていない、かといって、呼び鈴を押して、見知らぬ家を訪ねるのは訪問販売みたいで、警戒されるだけ。 その勇気もないし。
 とりあえず車を道路脇に止め、とぼとぼ歩きました。


  • と....、廃屋が目についた。  場所が特定されなように、セピア写真にしています↓
廃屋

当然、だれも住んでおらず、廃屋の隣には新しい家が経っていたので、古い屋敷を解体せずにおかれたものだろうと思われました。 家の側面にはぼろぼろになったふすまがあり、下張りの紙がむき出しになって、風でぱたぱたひらめいて いました。



  •  しかし、その下張りはただものではなかった。毛筆で書かれている。
    おそる、おそる、近づいて下張りに注目。

  • 一見して武士と判るような名前が羅列されていて、禄高らしき記載も見えました。道から目をこらしてその名前を確認しました。


  • ...んっ、このメンバーは...。なんと、私がプリントアウトした陪臣の名前とほぼ一致している!
    一致

    ちょっと失礼、と廃屋の中をのぞく。廃屋の中にもふすまが数枚あり、内張りがむき出しになっているものもあった。






    • このふすまは、保存しないと...。

    一目散に廃屋の隣の家の玄関の前へ。家の中からはテレビの音が聞こえている。躊躇なんてしてられない。呼び鈴を押す。


    • 返事がない...。

    テレビの音がするので、だれかいるはずだが....。玄関の引き戸を引くと、開いた。「ごめんください。すみません。ごめんください。」


    • 返事がない...。

    上がり込むわけにもいかない。ともかく、引き戸を閉めて、その家を後にした。数分歩くと畑で作業をしているご夫婦が見えました。 「すみません。古いことを聞きますが、江戸時代、このあたりに.....」


    • ご主人:「ああ、そんなことがあったと伝えられている。
          ところであんたは誰?」

    「山口市在住の一個人、ですが...」 ともかく、私の素性と目的を簡潔に説明すると、ご主人は作業の手を止め、畑から私の ところまで歩いてこられました。当初の目的である、A村における江戸時代の話を聞きました。


  • かなりの収穫がありました。幕末から150年が経過しているというのに、すごい!

    私:「ところで、あそこの廃屋ですが、あれは隣の方が管理されているんですか?実はちょっとのぞいてみたら、 ふすまの下張りから古文書が見えたんですが、是非、歴史調査に活用したいです!」

    ご主人:「はあ、そんなものがあるかい。金目の物は、骨董屋に頼んで引き取ってもらったらしいが。」

    私:「ええ、金目というのではなく、ふすまの下張りですから。先ほど、隣の家を訪ねたのですが、おられたようだったんですが、出てこられなくて...」

    ご主人:「ああ、あそこのばあさんは耳が遠いから。わしが話してやろう。」


  • なんとラッキーな!

    ご主人と廃屋の隣の家まで歩いていきました。と、ご主人はいきなり引き戸をがらがらと開け、


  • 「おってかのう? おい、おってかのう?」

    と、家に上がって行かれた。 (←この状況、分かる人には分かる田舎の近所付き合いの一コマですねぇ。)
     おばあさんが玄関に出てこられ、さきほど会ったばかりのご主人が私を紹介してくださり、「ああ、役に立つものならどうぞ 持って帰りなさい」とおばあさんに言われ、ふすまを譲っていただけることになりました。

     廃屋のふすまをはずし、車に積み込む作業が終わるまでは、ご主人に居てもらいました。許可をいただいたからといって、 私一人が田舎の廃屋で作業をしていたら、泥棒と間違えられるので、ということで、申し訳ないですが、とご主人にお願い してそうしました。


  • そして、ふすまや下張りをぜ〜んぶ積んで帰りました。
    ルーフ

    ルーフにはふすまが5枚。









    ルーフ

    ふすまから取り出せた下張りは車内に入れました。










  • 下張りはがしは終わりましたが、整理がなかなか...。



  • 整理がついたら、また紹介します。




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